2017年3月5日日曜日

「而今の会」への思い(山口籟盟)

こんにちは。「而今の会」の琴古流尺八奏者・山口籟盟です。


今回は、この会の発足に至る経緯や、これからどんなことを試みていきたいかなどについて、ちょっとご紹介させていただきたいなと思い、記事を書いています。



さて、ネットや動画サイト、SNSが発達した昨今、本当に世界中の様々な音楽の演奏動画と、日々たくさんの出会いがありますよね。僕は子どもの頃から音楽が大好きで、純邦楽に限らずクラシックやロック、民族音楽など、「いいな!」と思った演奏動画と出会ったら視聴して楽しんでいます。

例えば、最近注目した動画には、こんなのがあります。


これは、ブラジルのJuliana Vieiraさんという女性ギタリストの演奏動画です。オーストラリアの「AC/DC」というメタルバンドの存在は高校生の時ギター雑誌で知りましたが、実際に楽曲を聴いたのは、彼女の演奏が初めてです。これをきっかけに僕はAC/DCCDを買い、すっかりファンになってしまいました。個人のYouTube動画が、世界規模の有名バンドのファンを増やしたなんて、本当に今だからこその出来事ですよね。ちなみにJuliana Vieiraさんは、ブラジルでBOSSのエフェクターなどのプロモーション動画として、こうした有名曲などのカバー動画をリリースしているようです。





つづきまして、こちらは台湾のストリート・ドラマー、羅小白さんです。この方は、大学ではダンスを専攻していたようですが、音源に合わせてダンスパフォーマンスを取り入れたドラミングスタイルでストリートライブをしている先駆者を見かけ、憧れてこの演奏活動を始めたのだそうです。本当に楽しそうにドラムを叩いているのが印象的ですよね。曲の音源自体は小型の音楽プレイヤーか何かに入れていて、イヤホンでモニターし、スピーカーから出た音楽にドラミングを合わせて曲にしているようです。


以前と大きく変わったなと心底思うのは、昔はCDショップでアルバムを買ったりレンタルしたりしないとどんな音楽なのかすら分からないのが当然だったのに、今では本当にたくさんの音楽との「出会い」が身近なところにあふれていますよね。加えて「個人メディア」のアピール力が強くなり、大手マネジメント会社の力に頼らず、一人一人のミュージシャンが自分の手で、本当に自分がやりたい音楽を発信し、たとえ場所が遠く離れていても、本当に心から共感してくれる個人リスナーの元にその音楽が届く、これって本当に素晴らしいことだと思います。幸せな時代になったものです。

また、この2人のミュージシャンを見て思うのは、以前だとギタリストにしろドラマーにしろ、メンバーを集めてバンドを組まないと表現の場そのものがなかった。しかしそういう以前からの固定観念にとらわれず、動画を通して自分ならではの演奏の魅力を、自分自身の力でアピールする方法を確立していますよね。本当にすごいなと思います。





こうしたミュージシャンを見て、自分も何かやってみたいと思い、ここ2年くらい取り組みを継続しているのがweb演奏会」という動画公開です。自宅の稽古場で琴古流本曲や地歌箏曲を尺八で独奏している動画を撮影しYouTubeにアップ、Facebookでも公開して、こうした音楽ジャンルに興味を持って下さっている方に聴いていただこうと思ったわけです。もちろん、有名なミュージシャンのアクセス数に比べると微々たるものですが、地道に取り組みを継続したところ、少しずつ興味を示してくださる方、毎回見てくださる方、また動画がきっかけでご縁ができ「Facebook友達」になっていただいた方などが出てきてくださって、本当に「自分の音楽が受け入れてもらえた」と嬉しい気持ちになりました。どうもありがとうございます。

しかし、やはり「誰かと共演してみたい」という思いも自分の中に燻っているのが、自分自身としても気づき始めてきました。琴古流尺八は本曲と外曲が両輪であり、外曲(主に地歌箏曲との三曲合奏)は尺八が三絃や箏を引き立て合奏をより洗練させていくところに、流儀の真骨頂があるからです。


そんなとき、脳裏をよぎったのが、以前TVCMで見たことのある、この動画です。


ギタリストのCharをはじめ、世界各地のさまざまなミュージシャンが、現地で演奏動画を撮影し、それらの音を集合させ1曲の演奏に仕立てています。まさに「音楽に国境はない!」とでもいうようなこのムービー!この三曲バージョンはできないか

そして実現したのが、この「而今の会」の直接的なきっかけとなった「ジョイントweb演奏会」での大庫さん、東さんとの共演なわけです。大庫さんも東さんも、僕は直接お会いしたことはありません。自分のFacebookでの投稿や演奏動画などをきっかけに、「Facebook友達」としてお知り合いになった方です。しかし、メールのやり取りをするうちに古曲の話でもりあがり、「ジョイントweb演奏会」の開催と相成ったわけです。

ジョイントweb演奏会開催の詳しい経緯はこちら
『籟盟の尺八稽古帳』より





「ジョイントweb演奏会」の革新的なポイントは、「遠隔地同士で共演」という点だけではありません。演奏者としてのキャリアの違いを超えて、対等な「音楽仲間」として、ともに音楽づくり行うことができたのは、伝統芸能である「三曲」の世界では珍しいことと言えるのではないかと思います。


大庫さんも東さんも、僕より圧倒的に演奏者としてのキャリアが長い先輩であり、通常なら「先生!お勉強させていただきます」という形式になるところです。しかし、実は僕はお二人とも「さんづけ」でお呼びさせていただいてますし、ジョイントweb演奏会の曲決め、糸と竹の合わせ方や音楽表現については、個人対個人の対等な関係で話し合いを持ちました。企画をお願いした年下の僕のこの提案に、暖い心持ちで肯定してくださったお二人には心から感謝していますし、そういう話し合いは「お勉強させていただきます」形式にはない、熱中してしまう楽しさがありました。



僕が先月出会ったこの動画を見て下さい。



ハワイでウクレレを弾く、少女のデュオ・ユニット「Honoka & Azita」です。2人がおそらく同い年(か近い年齢)の友達同士であるためだと思いますが、本当に楽しそうで、演奏そのものに「心の交流」とでもいうような雰囲気を感じますよね。三曲も、難しい顔でただ真面目に演奏するだけではない、こうした要素がぜひ欲しいなと思うんです。そのためには奏者同士がフランクリーな親しい関係でありたい。例えば学生同士で組んだバンドのような。デーモン小暮で有名な「聖飢魔Ⅱ」というバンド、あのバンドはメンバー同士の仲が良いことで有名ですが、あのバンドも早稲田の学生サークルが母体なんだそうですね。そういう「バンド」や「ユニット」のような要素を持ったメンバーで「三曲の古典」をやってみたいんです。



今回、「ジョイントweb演奏会」がきっかけとなり、「而今の会」の結成、3人で生演奏のライブという企画を進めているのですが、こうしたキャラクターを持つ会で古曲を演奏することで、「実演芸術としての地歌箏曲の可能性」を探ってみたいなと僕は考えています。「お稽古しておさらい会に出す」ためだけの曲ではない、会場のお客さんに聴いていただいて、音楽的な価値・魅力を感じていただけるものにする。この3人で、これから夏までたくさんの話し合いを持ちながら入念に準備していけば、それはきっと可能なことなのではないかと信じています。



そして、この話を聞いて興味を持って下さった方、共感していただいた方に、ぜひ足を運んでいただきたいなと願っています。このブログをご覧いただいたのも「ネット」「SNS」が現代だからこそ生み出してくれたご縁です。僕が先ほどの動画たちを介して素晴らしいミュージシャンたちの音楽と出会ったように、このブログを通して、「而今の会」と、「実演芸術としての地歌箏曲」を求めている観客の方とが結びつくことができたら、本当に嬉しいです。この記事に興味を持って見てくださった皆さんは、きっとそういう考え方に共感してくださると思います。僕たち3人の奏者と、その演奏を聴きに来てくださる皆さんとで、「三曲」という音楽ジャンルに新しい風を吹き込んでいきましょう!!




これからもブログを少しずつ更新しながら、演奏会当日までどんなことをしているのか、随時発信していきたいと考えています。このブログという媒体も、僕たちの活動の一つの表現形態でもあるわけです。どうぞ、ちょくちょく見に来ていただけますよう、お願い致します!

〔文責:山口籟盟〕

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