新年明けましておめでとうございます。
「而今(にこん)の会」でございます。
本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
※「而今の会」の活動コンセプトや発足の経緯については、こちらへ。
この度は「而今の会・平成30年新春web演奏会」と銘打ちまして、
純邦楽の演奏を通して皆様に少しでもお正月気分を味わって頂こう、
折角のお正月なので、日本の伝統的な楽曲を聴きやすい形でお届けしようと、
メンバー三人で演奏を収録し、「演奏動画」という形で公開させて頂いた次第です。
そもそも、この企画の発端は、夏に開催しました
「葉月の陣屋、而今の会演奏会」の打ち上げで、
「…次は、何する??」という話題の折、
「新春に、web演奏会でもしましょうか!」との発言がきっかけでスタートしました。
メンバーが長野県、静岡県、福岡県と、それぞれ遠くに離れているため、
なかなか実際に集まっての合奏や演奏会出演が難しく、
それならば、これまでの「ジョイントweb演奏会」や「オンライン下合わせ」のような
「ネット上での三曲合奏」で演奏を発表しようと思いついたのです。
選曲にあたっては、新春にふさわしい祝儀曲であること、
聴きやすく長すぎないこと、
地歌箏曲の中でも知名度が高いこと、
そして生田・山田の両流で合奏可能なことなどから、
「八千代獅子」に決定しました。
「両流で合奏可能」とはいっても、曲のテンポや伸び縮み、
マスなど様々な相違点があり、
今回は山田流を本手としてそちらに基本的に合わせるように致しました。
また、通常は三絃が本手、箏が替手という演奏パターンが多い中、
「而今の会ならではの演奏を」ということで、本手を山田流の箏本手とし、
三絃なしの箏二面に尺八を加えた形で合奏しています。
《メンバー3人より一言》
初学曲と雖も 奏者の技量が上がればそれだけ表現の上で聴く者を惹き付ける名演となるのが 東西問わず古典と言われる音楽の魅力ではないでしょうか…
自らの奏でる音一つ一つに向き合いその行方を確かめながら 聴く人の心に響く演奏をするという事 それが私の目指すものです。
このWeb演奏会は、客観的な自己分析を余儀なくされるという ともすればお家芸山田流と自惚れがちな私に 襟を正す良いきっかけとなりました。
(大庫こずえ)
今回は大庫さんが弾く山田のお箏が
タテですので、普段弾いている生田の間尺
よりも短くテンポが異なり、とりわけ
立ち上がりが早くて慣れるまで
何度も弾き直してました。
それと、打ち替えの件の詰め込み具合も
1.5倍速く感じて六と斗の半押しと
強押しの押し直し(生田の手は少々厄介)の
切り替えが相当に素早くしないと山田の流れに
乗り遅れるので必死(爆)でした。
ですので、同じ曲でも間尺やノリがこうも違うものだと
改めてカルチャーショックを感じてます。
とは言え、そうした違いを越えて理解して共に
弾くのがこの会の主旨なのだと実感しております。
そう言えば、八千代獅子の解説を見て
おりますと獅子は兎を得る事にも
全力で取り組むとあります。
八千代獅子が初歩曲と言えども大曲と
変わらずに全力で接するべきなのだと
改めて感じるものがありますね。
(東 啓次郎)
「八千代獅子」を提案した理由のもう一つに、実は以下のような出来事もあったんです。
私事ですが、僕は本業が小学校教員なんですが、担任をしている小6の音楽の「鑑賞CD」を手に取ってみてビックリ!なんと、「和楽器」の鑑賞教材として、中能島欣一師、山口五郎師らによる「八千代獅子」が収録されているではないですか!!早速「而今の会」のメンバーにも音源を聴いて頂いたりしました。実はかくいう自分も、「山田流の八千代獅子」を本手・替手・尺八のフルバージョンの合奏で聴いたのは、これが初めてでした。感想は「粋だなぁ!」の一言で、素晴らしい名演であったのはもちろんなんですが、本当に「山田流箏曲」にしっかりとなっていたのは当然なのですが、やはり驚きの感動がありました。
こういうのも「何かの縁」なのかなとも思い、上記の事情に加えてこうしたことも提案の際にお話しし、同曲を推薦したような次第です。
尺八をお習いする際は、この曲はご存知でしょうが「初傳曲」として、習い始めの頃にお稽古する曲となります。しかし、数ある地歌箏曲の中でもとりわけ旋律が特徴的で印象に残りやすいものであり、楽曲としての完成度、芸術性の高い一曲であるように感じます。曲の長さもそんなに長くないですし、普段純邦楽や三曲にはあまり接する機会の少ない方にも、聴いて頂きやすい楽曲なのではないかと思います。
加えて、関西での修行時代、師匠が師事されていた故・松村蓬盟先生がNHKラジオの新春の放送で演奏なさっていたのが記憶に残っている曲でもあります。松村先生は師匠と同席させて頂いた奈良での勉強会の時にも「初傳の曲だからといって、絶対あなどってはいけません。初傳の曲でも奥傳の曲でも、どの曲でも本当に合奏の機会をありがたく感じ、全力で曲を勉強しなくては」というようなお言葉を述べておられました。自分の修行時代の中でも、今日に至るまで自分の中での三曲への姿勢を作り上げて頂いた、とりわけ大切な思い出のうちの一つです。
「オンライン下合わせ」を行った際、大庫さんから尺八の合わせ方について重要なアドバイスを頂き、僕自身の尺八の合奏の考え方を大きく前進させて下さいました。やはり、尺八は合奏させて頂くのが最大の勉強ですね。本当にこのような機会を頂き、ありがたく思っております。
(山口籟盟)
『八千代獅子』:地歌・胡弓曲。本調子手事物。獅子物。初世藤永検校移曲。作詞者不詳(園原勾当とも)。原曲は尺八曲で、政島検校が胡弓化し、それをさらに三絃に移したものという(「歌系図」)。手事物は「大ぬさ」(1687、貞享4以前成立か)にある「獅子踊」の器楽部を発展させたもので、同所の注に「八千代」と記されるものが原曲か。「大ぬさ」の「獅子踊」と「八千代獅子」との比較演奏例は、平野健次監修「三味線古譜の研究」(東芝EMI、1983)に収録。詞章に豊年の吉兆とされる松竹梅を詠み込む。手事は三段からなり、段の区切り方は流派によって異同があるが、各段変奏度の少ない同旋律の反復に近い。箏の手付は地域・流派によってさまざま。平調子のものが一般的であるが、大阪では市浦検校手付の雲井調子のものもあり、東京では米川琴翁の本雲井調子の手付も行われる。山田流でも雲井調子。三絃替手(三下り)は国山勾当作曲とも。全曲通して「万歳獅子」との打合せも行われる。かつては手事部に歌を付けた「井戸替八千代」(北新地川久こと和風作詞)などもあり、歌の部分のみを「新砧」などの前後に付す演奏スタイルもあった。また、胡弓入り三曲合奏としても行われ、歌舞伎芝居の下座などにもとり入れられる。宮城道雄による編曲(「編曲八千代獅子」1952、昭和27)もある。手事の旋律はさまざまに流用され、歌舞伎の下座や長唄「船弁慶」などにもとり入れられる。谷垣内和子(『邦楽曲名事典』平凡社 1994)
0 件のコメント:
コメントを投稿